その他の各種公正証書
公正証書は、法律行為その他私権に関する事実について作成するものとされています。
法律行為には、売買、賃貸借、消費貸借などの契約や遺言などの単独行為があります。専用ページでご紹介した遺言や任意後見、信託、離婚給付のほかにも、賃貸借、消費貸借をはじめとして、いろいろな種類の法律行為について、公正証書が作成されています(下記(1)~(3)参照)。
次に、法律行為以外の私権に関する事実についても、後日の訴訟や特許申請等に備えて証拠保全のため、債務の弁済、金銭の授受、発明品の機動実験、作動状況の確認、貸金庫の開扉等の法律上重要な意味のある事実に関し、公証人がその事実の現場に立ち会ったうえで、公正証書を作成することができます。この類型の公正証書は、公証人が自ら体験した事実を公正証書に録取するという意味で「事実実験公正証書」と呼ばれています。
このほか、他の章で紹介した尊厳死宣言公正証書や保証意思宣明公正証書も、事実実験公正証書の類型に属します。
(1) 不動産など重要な財産に関する継続的な賃貸借契約
公正証書によらないと効力を生じない事業用定期賃貸借契約、マンション規約の設定等もあります。家賃の支払い等金額が確定している金銭債務については下記の強制執行認諾条項を付けることができます。
(2) 金銭消費貸借契約、債務を承認してそれを返済するための契約
債務の支払い等金額が確定している金銭債務については下記の強制執行認諾条項を付けることができます。示談契約、和解契約についても、公正証書を作成しておくことが極めて有効です。
(3) 任意後見契約と同時に行う財産管理委任契約、死後事務委任契約
任意後見契約と同時に行う財産管理委任契約については、「任意後見で老後の安心!」のページの「4 移行型について」を参照してください。委任契約は、委任者の死亡によって終了しますので、委任者の死後の事務も処理してもらいたいという場合には、別途、死後事務委任契約を締結する必要があります。
(4) 各種事実実験公正証書
後日の訴訟や特許申請等に備え、あるいは後日関係者に対する説明が必要になった場合に備えるなどの目的で、証拠保全のため、事実実験公正証書と呼ばれる類型の公正証書が作成されます。
やむを得ない理由により金融機関が貸金庫を開庫したり、移転する現場や、企業等が新規開発した装置を作動させ、一定の性能を発揮させる現場などに、公証人が実際に立ち会った上、目撃、経験した事実について公正証書を作成するものです。
貸金庫開庫の現場に公証人が立ち会い、その状況を記述する事実実験公正証書、その他後日の訴訟等に備える目的で公証人が現場に立ち会い、目撃事実等につき作成する事実実験公正証書、当事者の公証人に対する供述等を録取した事実実験公正証書等があります。